キトサンとは〜地球最後のバイオマス

海からの贈り物〜キチン・キトサンが現代人を健やかに!

カニ殻のサプリに含まれるキトサン。このキトサンはカニ殻に多く含まれるキチンから取り出されます。

キチンは、カニ以外にも、エビ、イカの軟骨、キノコ類、昆虫類の表皮、菌類の細胞膜などに多く含まれ、年間で推定1,000億トン生産されています。

カニ殻は主に蛋白質、炭酸カルシウム、キチンの3成分から成り立ち 、組成はそれぞれほぼ1/3になります。
カニ殻からキチンを取り出すには、まず、カニ殻の炭酸カルシウムを塩酸で溶解除去します。次に、蛋白質を苛性ソーダで除去します。その後、十分に水洗いすると、キチンが残ります。

このキチンをさらに苛性ソーダの濃アルカリで100度〜120度に加熱し、脱アセチル化処理を行うことで、キトサンが生成されます。

キチンからキトサンを取り出す詳しい工程については後述しますが、この地球最後のバイオマス(未利用生物資源)ともいわれるキチン質。

こうしたキチン質から取り出されるキチン・キトサンが、細胞活性や免疫調整、腸内環境の整備、抗菌・抗カピなど人々の健やかな生活に貢献することが期待されています。

キチン質、誕生の歴史〜ヒトは体内でキチンを作れない

ここで少し、キチンの誕生と研究の歴史についてお話しましょう。

宇宙は約150億年前にビッグ・パンにより誕生しました。高温・高密度の物質とエネルギーが膨張・冷却し、銀河、星、惑星が、そして生命が生れました。太陽が50億年前に、45億年前に地球が生まれ、35億年前に大地に最初の生命が誕生しました。

そして、原生代(20億年前)にキチン・キトサンを含むと思われる真核生物が、シルル紀(13億年前)にはセルロース(食物繊維の一種)を成分とする陸上植物や甲冑魚(かっちゅうぎょ)が現われ、デポン紀(3億7000年前)には陸上に節足動物が、石炭紀(3億5000年前)にはトンボが現われました。

キチン質の素である、カニ族はジュラ紀の後半(l億5000年前)に地上に現われたといわれています。

その後、第三紀に初期の霊長類が現われ、約30万年前に人類の祖先ホモ・ハビリスが誕生し、現在のホモ・サピエンスへと進化していきました。

この地上に生物が誕生して以来、キチンとセルロースは互いに利用し合い、生態系のバランスを保ってきました。

ただ、私たち脊椎動物も植物も体内でキチンを生産することはできません。キチン質をもっている昆虫類や甲殻類から与えられることにより、生命活動が維持できます。

しかしながら、人類は長い歴史の中で、自然のキチン質を摂取しづらくしてしまいました。

その人類が今、捨てられていたカニ殻のようなバイオマス(未利用生物資源)から精度の高いキチンが得られること、そして、人類だけでなく、地上の生きとし生けるものへの有益な物質であることを認識しはじめたのです。


キチン質、研究の歴史〜日本で盛んに研究がおこなわれる

キチンは、19世紀初頭、キノコから単離されました。1811年に、フランスの歴史学者のブラコノーがキノコの中にキチンが存在することを発見し、これを「ファンジン」と呼びました。

1823年には、フランスの自然科学者のオジールが、甲殻類の殻の外皮の構成物質として発見し、「キチン」(ギリシャ語で封筒の意)と名付けました。

こうして、今からおよそ200年前に、キチンが発見されたわけですが、1800年代というと日本では江戸時代末期にあたります。

当時の西洋の有機化学の知識では、キチンのヒトや環境への有用性の探求にまで及ぶことはありませんでした。

しかし、それから長い年月を経て、日本でキチンに科学の光が当たることになります。

発端は、富士バイオの先代である、亀井代表がカニ殻の処理を相談されたことにあります。日本一のカニの水揚げ量を誇る鳥取県境港ではカニ殻の廃棄に頭を悩ませていました。

しかし、亀井代表は、廃棄場にうず高く積まれたカニ殻を見た時、カニ殻の周囲の作物が活き活きと生い茂っていることに驚きました。

そして、カニ殻には、人や環境に有益な成分が含まれていると確信したのです。

折しも、日本では1970年代に文部省が「文部省科学研究費総合研究(B)」を打ち出し、キチンに科学研究費を付け、研究が盛んにおこなわれるようになっていました。

その後、キチンからキトサンを取り出す化学的処理技術も確立し、1991年9月には、人々の健康の維持・増進を理念に「キチン・キトサン協会」が発足しました。

キチン・キトサン協会には、カニ殻キチン・キトサン製品の販売企業、原料供給・製造企業らが参画。キトサンのヒトや環境への有用性についての数多くの研究報告がおこなわれました。 


キチン・キトサンのポイント
  • ふだんの食生活の中では、キチン質が摂りずらいのが現状です。
  • キトサンは自然原料のカニ殻から取り出される、人や環境に有益な成分です。
  • キチン・キトサンの有用性の研究は日本で盛んにおこなわれました。
キトサンの健康食品としての規格基準「キチン・キトサン協会誌」Vol.23-24より
キチンから見た植物の世界(京都大学博士 薬学 原 正和)「キチン・キトサン協会誌」Vol.21-23より
いかなる植物からもキチン質は見い出されない / 植物はキチン分解酵素をもっている / カニ殻は土壌の病原菌巣を叩き、作物の健康を維持する / 植物、常に外敵をキチン分解酵素で破壊する態勢 / カニ殻農法、あたかも植物のワクチン療法 / キチン、植物の免疫力を高め防衛反応を引き起こす

キチン・キトサンの製造


キチン・キトサン協会理事
甲陽ケミカル株式会社
代表取締役 赫 勲男

1)製造研究の歴史

キチン・キトサンの歴史は古く、1811年に次の様な文献が発表されています。

即ち、Braconnot H Sur Pa nature des Champignons .A nn. Chi .Ph ys. 79 , 265N30Hというものです。江戸時代末の頃、すでにキチンの研究がされていたことがうかがえます。

この頃の研究は専ら「キノコ」類「昆虫」類及び「菌」類に関するものが多く、「エビ」「カニ」の類が研究対象に上がってくるのは昭和12年頃からです。

1936年には有名なDu Pont社がキトサンによる接着成型コーテイングに関する特許を出願していますので、昭和初期にはキチン・キトサンがどこかで製造されていたのでしょう。

2)キチンの抽出

カニ殻の組成は簡単にいうと、キチン、蛋白質及び炭酸カルシウムがほぼ1/3づつでカニ殻ができています。(エビ殻には炭酸カルシウム含量が少ない)従ってキチンの抽出とは蛋白貭と炭酸カルシウムをカニ殻から除去すればキチンが残るということになります。

キチンの製造において最も古い文献は1937年Rigby によるもので、炭酸カルシウムを塩酸で、蛋白質を炭酸ソーダで除去しています。以後発表された文献を整理すると、脱カルシウム、脱蛋白質に用いられる薬剤は次のようです。

脱カルシウム 脱蛋白質 精製薬剤
塩 酸
蟻 酸
EDTA
苛性ソーダ
マグロ酵素
パパイン
ペプシン
トリプシン
エタノール
アセトン
エーテル
Na-dadecylbenzem
Sulfonate Dimethylformamide

脱カルシウムにおいては塩酸が主で、蟻酸を用いる方法が1957年Horowity等によって発表されています。EDTA はエチレンジアミンテトラアセティックアシッドの略で現在でもキレート剤 (金属封鎖剤) として一般に広く使用されている薬剤です。ここではカルシウムの封鎖引徐去に用いられています。

脱タンパク質薬剤の主流は苛性ソーダですが、マグロ酵素ペプシン、トリプシン等魚類等の胃腸液に存在する蛋白分解酵素が用いられている他、パパイヤ、パインアップルに存在する、蛋白分解酵素パパインも1962年Takeda , Abe等によって用いられたという報告があります。

精製薬剤としては微量に含まれる脂貭色素等の除去にエタノール、アセトン、エーテル等が用いられていますが、微量成分の存在も許さない、学術的純キチンの採取に用いられたものと思われます。

3)キトサンの製造

キトサンはキチンの抽出に比べると若干化学的な反応を伴います。

即ち、キチンに苛性ソーダを反応させるとキ卜サンと酢酸ソーダができます。キチンのアミノ基に付加されているアセチル基を取るという意味で脱アセチル化反応と呼び、脱アセチル化率(DAC と表示することもある)とは長鎖のキチンのアセチル基が何%酢酸ソーダになったかを表しています。

キトサンの製造即ち脱アセチル化に用いられる薬剤の主流は濃厚苛性ソーダですが、

 無水ヒドラジン  硝塩酸  苛性カリ
 アルコール性塩酸

他にも、

 苛性カリ
 96%エタノール
 エチレングリコール
 50部
 25部
 25部

という報告もあります。

4)キチン・キトサンの製造法

キチン・キトサンの製造工程を図で示すと、次のようになります。

原料が天然物で、特異な構造をしていることもあり、連続生産方式(オートメーション方式)がとれないのが生産の効率化を阻んでいます。

キトサンの物理化学的性質


キトサンには、例えば次の表の様な規格値があります。

以下、規格項目や規格値、キトサンの特性などを説明いたします。

[ 1 ] 水分

キトサン製品100gがキトサン(絶乾物) 90gと水10gからできている時、水分は10%と表示します。キトサンは空気中の水分を吸収する性質があり、キトサンを空気中(普通の環境) に放置すると、製造時5%の水分のキトサンは空気中の水分を吸収しておよそ10%の水分を含有するようになります。(平衡水分)
キトサンのアミノ基(NH)を酸で中和したものを塩と呼びますが、キトサン塩の粉末は35%もの水分を吸収するため(保湿性) キトサンはシャンプー、リンス、クリーム等化粧品に利用されます。

[ 2 ] 灰分

キトサンは普通カニの脚からつくられます。カニの脚 (甲脚を含めて外骨格と言い、人間の骨にあたるもの) は、蛋白質1/3 、炭酸カルシウム1/3、キチン1/3 からできています。

人間の関節に当たる部分(これをキャッチ結合組織と呼びます)はその強度を強くするため、カルシウム分が多く含まれています。

我々はキトサンを造る時、塩酸でカルシウムを溶かしてしまうのですが、製造工程中の脱カルシウムにあてられる工程時間中※ ( 余り長時間反応するとキチンが分解されるので工程時聞が制約される)には一部溶出されずに残ってしまうのです。これがキトサン中の灰分の主な成分です。

測定法は磁製のルツボ(煎茶々碗の白くて小さいものと考えて下さい)にキトサン一定量を計り、800℃で約2時間焼き、冷却してから目方を計り、水分と同じ計算式で灰分%を計算します。有機物はすべて炭酸ガス、二酸化窒素としてガス化されます。

キトサンは金属を吸着する力が強いので、鉄なども灰分の中に酸化物として残ります。カルシウムは酸化カルシウムに、金属は金属酸化物になります。

灰分という表現は藁や木灰という感覚がありますので、最近「強熱残分」と呼ばれることが多くなりました。

カニ殻中のカルシウムは、蛋白質とともにキトサンの製造には不必要な成分ですが、カルシウム、蛋白質及びキチンを含んだカニの甲羅はカニグラタンに形を変えてよく見かけるようになりました。

又、焼きガニはカニを火にかけて焼きます。いずれも火に強いことを示しています。

[ 3 ] 脱アセチル化率

キチン・キトサンの構造式は複雑そうに見えますが、炭素、酸素、水素、窒素がその各々の手を過不足なくつなぎ合って一つの構造を作っているのがおわかり頂けるかと思います。

キチン・キトサンの構造をみると、キチンにはアセチル基がキトサンにはアミノ基がついている点がキチンとキトサンの構造上の違いであることが判ります。

例えば、エチルアルコールとメチルアルコールの構造式を見ると、ほんのちょっとした構造式の差でエチルアルコールは『百薬の長』となり、メチルアルコールは失明に至ります。このように、有機化合物はちょっとした構造の差で大きな性状の差が表われます。

このことは、キチンとキトサンについても例外ではありません。そこでいよいよ脱アセチル化率のお話しです。

キトサンはキチンを脱アセチル化してつくります。我々はキチンを高濃度苛性ソーダで処理してキチンを脱アセチル化し、キトサンにします。

脱アセチル化ですが、まず、酢酸に苛性ソーダを加える(酢酸を苛性ソーダで中和する)と酢酸ソーダと水ができます。次にキチンに苛性ソーダを加えると、キトサンと酢酸ソーダになります。

即ちキチンのアセチル基をはずして(脱アセチル)アミノ基を顕現させます。この化学反応を脱アセチル化学反応と呼びます。

キチンの単量体又はモノマーと呼び、その分子量は203ですから100ケ連なると(重合度100といいます)、そのキチンの分子量は203×100=20 ,300となり、保持しているアセチル基は100ケになります。

100ケモノマーを連ねたキチンを脱アセチル化すると、その内の80ケのモノマーのアセチル基がはずれて、アミノ基が顕現しまず。20ケのモノマーのアセチル基がそのまま残っている場合、脱アセチル化率80%のキトサンができたといいます。


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